特発性てんかんを持ったワンちゃんのための療法食について
先日 飼い主さんから「特発性てんかんを持ったワンちゃん用の療法食があるんですか?」というご質問がありましたので、そのことについてお話ししたいと思います。
「ニューロケア(ネスレ日本販売、ピュリナシリーズ)」というドライフードです。

こちらのフードは脳の健康維持に役立つとされている中鎖脂肪酸(発作を抑制する作用があり、脳のエネルギー源としても利用されると言われています)を含有したフードです。
その他、認知機能の健康をサポートするアルギニン、EPA +DHA、抗酸化成分、ビタミンB群を配合しています。
犬の認知症は診断がつきにくいですが、12歳以上になると6割以上のワンちゃんに大なり小なりの認知機能低下が認められるという報告があります。
よって、ニューロケアは高齢や既に認知機能が低下してきているワンちゃんにも向いているフードということになります。
では、これを食べていれば発作のお薬は飲まなくても大丈夫になるのか?という点が気になるところだと思いますが、ここからは私見をお話ししたいと思います。
まずお薬は必須だと考えます。
てんかんのワンちゃんを多く診察していますが、発作の頻度、大きさ、症状の様子は多種多様であり、同じお薬の量や組み合わせをしても効果についてはかなり個人差があります。
お薬を飲んでいればほとんど発作が出なくなる子もいれば、頻度が半分に減った、発作の大きさが小さくなった、全然変わらない、など様々です。
それほど症状に幅がある状況でフードだけでコントロールするのは難しいと考えています。
とは言っても、このフードが無効と言っているわけではありません。
実際、お薬を飲んでいても発作がゼロになることはあまり多くないため、このフードを併用することでお薬だけでは抑えきれない発作の頻度、程度を減らすサポートに役立つものと考えます。
よって、「お薬を飲んでいるけれどもう少し発作の回数が減らないかなぁ?』と思われている飼い主さんにお勧めしたいと思います。
認知機能に対しては目に見えた改善が見られるかというと、そこは厳しいと考えます。
発作のように見た目ではっきりわかるものではないため、使用効果は感じにくいと思います。
よって進行スピードを遅くする効果を期待したい飼い主さんにお勧めしたいと思います。
<まとめ>(私見)
・特発性てんかんのワンちゃんにおいてニューロケアをお薬の代わりにするのではなく、一緒に使って発作の頻度や程度を減らすことを目標にすると良い。
・認知機能効果については改善というより、脳に栄養を与え機能を維持し機能低下のスピードを遅くするという効果を期待する。
フードなので、ある一定の期間使用しないと効果が出ないと思いますが、ちょっとお値段が高めです。
詳細につきましては当院にお問い合わせ下さい。また、慢性腎不全、アレルギー、尿路結石などの疾患に対応する療法食を食べている場合は使用できない可能性があります。
詳しくは獣医師にお尋ね下さい。
たまきペットクリニック 神経科
担当獣医師:大内 詠子
