神経学的検査ってなに?(その2)
神経科の初診では、必ず「神経学的検査」という検査を行っています。前回は検査の目的や使う道具などについてお話ししましたが、今回は当院で実際に行っている内容をご紹介します。 「うちの子はどんなところを診てもらっているんだろう?」と気になっている飼い主さまの参考になれば幸いです。
神経学的検査とは
神経学的検査は、脳や脊髄、末梢神経など、いわゆる「神経のネットワーク」に異常がないかを調べるための診察です。 当院では、獣医神経病学会が発行している検査表に基づき、プロフィールや病歴の確認に加えて、次の7つのグループに分けてチェックしています。
🔍7つの検査項目
1観察
意識の状態、立ったり座ったりしているときの姿勢、歩き方、呼吸の様子などをじっくり観察します。 姿勢や歩き方は本来左右対称なので、どちらか一方にだけ異常がある場合は、この観察の段階で気づけることも多くあります。
2 触診
骨や関節に痛みがないか、筋肉の過度な緊張や萎縮がないか、左右差がないかなどを手で確かめます。 これによって、症状が神経の病気によるものか、あるいは整形外科的な問題など別の原因によるものかを見分ける手がかりが得られます。 神経疾患にはホルモンの異常が関係していることもあるため、皮膚や乳腺、お腹の張りを見たり、リンパ節、目や耳なども丁寧に触れて確認します。
3 姿勢反応
体勢が崩れたときに倒れないように自分でバランスを立て直せるかどうかを調べます。 ここに異常がある場合、脳や脊髄、末梢の感覚のどこかに問題があることが考えられます。 足元が滑らないよう、当院ではヨガマットなどを敷いて安全に検査を行っています。
4 脊髄反射
病変が中枢神経系(脳や脊髄)にあるのか、末梢神経系にあるのかを判断するための検査です。 左右の前足・後足、背中の皮膚、肛門の周りなどを調べ、運動神経と感覚神経がうまく連携しているかを見ます。 このとき、打診槌やモスキート鉗子といった道具を使います。
5 脳神経検査
脳自体に異常がないか、また異常がある場合には大脳・小脳・脳幹・脳神経のどの部分に問題がありそうかを調べます。 顔の動きも本来は左右対称なので、まぶたや口元、表情に左右差があれば異常のサインになります。 ペンライトを使って瞳孔の大きさや反応も確認します。
6 感覚検査
皮膚の表面の感覚や深い部分の痛みを感じ取れているか、逆に触られると過敏になりすぎていないかなどをチェックします。 これにより、病変がおおよそどのあたりにあるのか、損傷の程度がどのくらいなのかを推測する材料になります。
7 排尿機能の確認
自分の意思でおしっこができているか、膀胱を触ったときに尿がたまり過ぎていないかなどを見ています。 膀胱をそっと圧迫したときの手ごたえの違和感の有無も含めて、排尿に関わる神経がうまく働いているかどうかを判断します。
その後に行う検査とのつながり
これら1〜7の結果を組み合わせることで、「神経のどの場所に病変がありそうか」という“場所探し”を行います。
そのうえで、必要に応じて画像診断検査(MRIやCT)、電気生理学的検査などを行うかどうかを判断し、どの部位をどのように検査するかを決めていきます。
例えば、MRI検査では全身を一度に撮影するのではなく、必要と考えられる部分にしぼって撮影します。
CT検査については、状況によっては全身を撮影する場合もあります。
さいごに
今回は、神経科の初診で必ず行っている「神経学的検査」について、当院での実際の流れを簡単にご紹介しました。 文章だけでは分かりにくいところも多い検査だと思いますので、診察の際に気になる点があれば、遠慮なくお尋ねください。
たまきペットクリニック
神経科担当
獣医師 大内 詠子
